キャリアコンサルタントは、その名のとおりキャリアをコンサルティングする仕事です。相談者の問題を解決するために行動を促し、職業だけにでなく今後の働き方や可能性を広げていく専門職となります。
2016年4月から国家資格となり、社会的にも注目があつまっていますし、厚生労働省からもキャリアコンサルタントを増やしていこうと目標を掲げられています。
今回は、キャリアコンサルタントの仕事内容や必要な能力、キャリアコンサルタントに向いている人はどのような人なのか、ご紹介します。
キャリアコンサルタントになる方法や講座については【2021年最新】キャリアコンサルタントになる方法|受験資格・難易度・合格率・通信のみの講座も始まりました!で詳しく解説しています。
- キャリアコンサルタントの仕事内容
- キャリアコンサルタントが活躍する場所
- キャリアコンサルタントに求められる能力
- キャリアコンサルタントに向いている人
キャリアコンサルタントの仕事内容「何をする人?」
キャリアコンサルタントとは、
- このまま、今の会社で働いていていいのかな
- もっとスキルアップして、人生における仕事を豊かにしたい
- ワーキングマザーとして、もっと効率よく働く方法はないかな など
「ひとりで考えていても、解決の糸口が見つけられない」悩みに対し「専門的スキルを持ち」「親身になり」将来を一緒に考えてくれる人のことです。
これからの働き方についてだけでなく、ライフスタイルや家族構成・未来のビジョンまで引き出し、専門的な知識や経験をもとに相談者の悩みを解決します。ときに相談によって、今後の人生が大きく変わることもあります。
具体的にどのような仕事をしているのか?
キャリアコンサルという響きから「就職や転職の相談窓口」と思われることも多いようです。間違ってはいませんが、実際には仕事の相談だけにとどまりません。
相談者の健康や生活背景、将来のビジョンも考慮しつつ今後のキャリアをコンサルティングするため、仕事内容が多岐にわたることが多いものです。厚生労働省においては「キャリアコンサルティングの仕事の流れ」を、次のように分類しています。
参考、出典:厚生労働省>キャリアコンサルティング仕事の流れ
つまり
【できること】を考える | 「自己理解」「仕事理解」「啓発的経験」では、相談者の適職を探し、労働市場や企業に関する情報提供を行います。
その上で必要な能力は何かを考えていきます。 |
【したいこと】を考える | 「意思決定」では、自分が何をしたいのか考え、達成するために必要な短期・長期目標を立てていきます |
【やるべきこと】を考える | 「方策の実行」では「できること」「したいこと」から導き出された「今やるべきこと」を考え行動にうつす。活動状況を把握しながらサポートを行う |
場合によっては経歴書や職務経歴書・面接の指導などもすることもあります。
相談者の抱えている悩みを聞くところから始まり、本人の進みたい方向性をともに考え、キャリアアップや就職・転職・をサポートし、次のビジョンを描き進めるようサポートします。誰かの人生に関わることが好きな人にとっては、とてもやりがいのある仕事です。
キャリアコンサルタントが活躍する場所「どこで働く?」
キャリアコンサルタントが、活躍している場は主に次のような場があります。
- 教育機関
- 公的職業紹介機関(ハローワークなど)
- 企業内
- フリーランス
教育機関
キャリアコンサルタントが働く教育機関は、以下があります。
- 高校
- 大学・大学院
- 専門学校
仕事内容は、学生の進学・就職を中心とした進路相談を主な業務とし、授業やセミナーを行ったり、そのための資料作りも行うことがあります。
キャリアを1から創り上げる若者たちの可能性にフォーカスし、そのためのよりよい第一歩を踏み出せることに期待が高まっています。
公的職業紹介機関(ハローワークなど)
キャリアコンサルタントが働く公的職業紹介機関として、以下のような場で活躍をしています。
- ハローワーク
- 人材派遣会社
- 高齢者就職支援センター
- ジョブカフェ
主に、転職や就職に対するキャリアカウンセリングやフォローなどがを行われます。
ハローワークなどで、求職者の情報を元に仕事の相談を受けたり、必要に応じて職業訓練の紹介などをしている方々を受けることで、キャリアコンサルタントと初めて話すという方も多いものです。
特にハローワークなどの行政の機関では、障がい者や高齢者といった専門的知識が必要なキャリア支援や、ひとり親や出産によるセカンドキャリアの相談に乗ることも多いため、専門的な知識をもったキャリアコンサルタンが求められています。
一般企業
一般企業においても、キャリアコンサルタントが活躍するケースが徐々に広まりを見せています。
背景として、キャリアについて以下のような悩みを抱えている人が後を絶たないためです。
- 過酷な労働環境の悩み(パワハラ・セクハラ・超過労働)
- 職場での人間関係の悩み
- 副業の問題
- 雇用の問題
- 時代背景(終身雇用から成果主義)
企業側の望む、社員の働きやすい環境下での育成や、就労の多様性の受け入れ・制度の見直しを行うために、企業内における個別相談・カウンセリングによる効果を期待されています。
部署全体における、キャリアアップセミナーなどにも期待をされています。
フリーランス
起業や行政に属さずに、独立してキャリアコンサルタントを行う人もいます。
起業や行政にセミナーコーチとして呼ばれるたり、複数の企業と契約して定期的にカウンセリングを行うケース・働き方に関する講演を依頼されるケースもあります。
キャリアコンサルタントに求められる能力
「キャリアコンサルタントに必要な能力」について、考えていきたいと思います。
必要な能力というと難しく聞こえますが、相談者あってのキャリアコンサルタントなので「相談者に求められているものに応えられるかどうか」がポイントです。
どのようなことを相談者に求められているのかを洗い出すと、主に次の4つがポイントになると考えます。
- 傾聴力(聴く力)
- 相手を否定しないこと
- 相談者の気持ちを理解すること
- 社会的に成熟した人を目指すこと
厚生労働省では、以下のように発表されています。
【基本的スキル】
- カウンセリング・スキル
- グループアプローチ・スキル
- キャリアシートの作成指導・活用スキル
- 相談過程全体のマネジメント・スキル
【相談実施過程において必要なスキル】
- 相談場面の設定
- 「自己理解」支援
- 「仕事理解」支援
- 「啓発的経験」支援
- 「意思決定」支援
- 「方策の実行」支援
- 「新たな仕事への適応」支援
- 相談過程の総括
必要な能力①|傾聴力
傾聴力とは「人の話を聞く力」のことで、キャリアコンサルタントに、もっとも必要と言われているカウンセリング技法のひとつです。
カウンセリングというと「何かを指導して貰える」「カウンセラーの提案によっていい結果を出せる」と思ってしまいますが、カウンセリングの中心者はカウンセラーではなく相談者です。
相談者を中心に考えるには、相談者の悩みを「聴く力」と、相談者本人も気付いていない心のうちを「聴きだす力」がとても重要になります。こうしたスキルをまとめて「傾聴力」と呼びます。
必要な能力②|相手を否定しないこと
相談者の問題を解決するためには「相手を否定しないこと」も必要となります。「否定しない」という行動の中には、ときに「アドバイスをしない」も含まれます。
1人では解決できないほどの悩みを抱えて、キャリアコンサルタントを訪ねてくる方々は「自分の言い分を誰かの話したい」という気持ちもあります。悩みを抱える人の多くは、吐き出すことで胸につっかえていた気持ちが、ある程度和らぐことも多いものです。
相手の抱えている問題をそのものを否定しないことや、信頼関係のないうちにアドバイスしないことも、プロのコンサルタントとして重要なポイントです。
必要な能力③|相談者の気持ちを理解すること
「相談者の気持ちを理解すること」も大切です。簡単に聞こえますが、プロとしてよほどのことがない限りは、どのような方に対しても対等に理解を示さねばなりません。
たとえばですが、相談者が求めるキャリアビジョンに少し違和感を感じた場合にも、ひと呼吸おき「なぜ、相談者はそのような道(または、考え方や悩み)を進んでいるのか」と、受け入れて理解しようとする姿勢が必要となります。
「理解する気持ち」を積み重ねることによって「寄り添って貰えている」と感じた相談者とキャリアコンサルタントとの間には、信頼関係も生まれます。信頼感が生まれてこそ「新たな提案」や「専門的なアドバイス」が相談者の胸に響くようになる場合もあります。
必要な能力④|社会的に成熟した人を目指すこと
「社会的に成熟した人を目指すこと」も大切です。とはいえ「社会的に成熟」というと定義の幅が広すぎますよね。
ここでいう「社会的に成熟した人を目指す」とは、キャリアコンサルタントとして「素直さや初心さを忘れず、常に自分への成長を追求し続ける」ことだと考えます。
キャリアコンサルタントとして向上したいという気持ちがあれば、常にその時代のキャリアを意識し、年齢を重ねても時代に取り残されにくくなります。
相談者の困りごとと「時代に沿った知見」と「経験」の積み重ねが、キャリアコンサルタントとして求められるスキルだと考えます。
キャリアコンサルタントに向いている人
「キャリアコンサルタントに向いている人」を考えていきましょう。
以下に共感できる方は、キャリアコンサルタントに向いていると言えます。
- 誰かの役に立つことが自分の喜びとなる人
- 自分と違う価値観を大切に思える人
- 自分自身も過去にキャリアで悩みを抱えたことがある人
また「このような人間性になりたい」といった憧れがある場合も素質のひとつです。悩みや経験の克服を重ね、キャリアコンサルタントに思考になる可能性が高い人でしょう。
誰かの役に立つことが自分の喜びとなる人
キャリアコンサルタントは『相談者の問題を解決する仕事』であるために、相談者の悩みが解消されていくことが嬉しいと感じられなければ、相談過程に辛さを感じてしまいます。
そのため「誰かの役に立つことが自分の喜びとなる人」は、とてもキャリアコンサルタントに向いていると言えます。
人の役に立つとは、ものすごいことを誰かに提供することではありません。
相談者の悩みを聞く
「また相談したいな」と思ってもらう
相談者が相談前より少し笑顔になる
こうした些細なことでも「人の役にたつ」と言えます。
言い方を変えると、ビジネスシーンにおける「縁の下の力持ち」となることです。周囲には、キャリアコンサルタントの頑張りは目に留まりにくいかもしれません。誰にも認められなくても「縁の下の力持ちとして支えた」「相談者に喜んでもらえた」という、達成感を感じることができればおすすめです。
自分と違う価値観を大切に思える人
キャリアコンサルタントとして働くには「価値観」の違いを、大切に思えるかどうかもポイントです。価値観の違いを「認める」ではなく「大切に思う」です。
キャリアコンサルタントに限りませんが、世の中には価値観の違う人が大勢います。家族や職場といった集団の中で価値観の違いを認め合いながら、なんとか人間関係を創り上げていきます。
日常における人間関係では、価値観の違いに対し「考え方が違うんだな」と、割り切って認めればいいのですが、キャリアコンサルタントとして相談を受ける中ではそうはいきません。
「相談者はなぜ、そうした考えを持っているのだろう」と、自分との価値観の違いに寄り添う必要も出てきます。
相談者の考えや目的に対する意見や希望を聞き、対策・検討を重ね最善の方法で進んでいけるようにすることが、キャリアコンサルタントの仕事です。取り組みの中で、お互いの価値観の違いを感じることはあっても、誰が主役でゴールはどこなのかを忘れないようにしなければなりません。
自分自身も過去にキャリアで悩みを抱えたことがある人
自分自身も「キャリアで悩みを抱えたことがある」という経験は、キャリアコンサルタントをする上で大いに役に立ちます。
例え相談者の困りごとと、自分が過去に抱えたキャリアの悩みの背景や課題が違っていたとしても「仕事で深く悩んだ」という気持ちが重なり、理解できる部分も多いものです。
自分の経験と相談者の気持ちを重ね合わせながら、キャリアコンサルタントとしての知見を融合させれば、相談者の悩みをより理解できるはずですよ。
まとめ:キャリアコンサルタント|仕事内容や必要な能力・向いてる人について詳しく解説
キャリアコンサルタントの仕事内容
キャリアコンサルタントに必要な能力
- 傾聴力(聴く力)
- 相手を否定しないこと
- 相談者の気持ちを理解すること
- 社会的に成熟したことを目指すこと
キャリアコンサルタントに向いている人
- 誰かの役に立つことが自分の喜びとなる人
- 自分と違う価値観を大切に思える人
- 自分自身も過去にキャリアで悩みを抱えたことがある人
国も人材を増やそうと「2024年までに、10万人のキャリアコンサルタントを養成」するといった数値目標を掲げています。
今回紹介した、必要な能力や適性から「キャリアコンサルタントに向いているだろうか」と、自分をコンサルしながら考えてみて下さいね!