ジョブ・カードは、社会人経験のない学生や求職者を支えるために、厚生労働省が新ジョブ・カード制度推進基本計画として、就職活動や職業訓練に役立ていこうと普及を進めているものです。
手書きでもパソコン入力も可能で(保存・書き換えが可能)、書き込むことも多く「どのように書いていけばいいのだろう」と、途中で手が止まってしまう方もいるかもしれません。
この記事では以下のことについて、解説します。
- ジョブ・カード書き方のポイント
- ジョブ・カードの書き方・記入例
この記事を読むことで、ジョブ・カードを書きあげること出来るようになりますよ。
【はじめに】ジョブ・カードの書き方のポイント
ジョブ・カードとは何かをおさらいしつつ、書き方のポイントを解説します。
ジョブ・カードとは?
ジョブカードは、社会人経験のない学生や求職者の経歴や職業能力を証明するものです。
厚生労働省も「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力の証明」機能を担うツールとして、作成を推進しています。
平成20年から活用していますが、平成27年10月からは、「新ジョブ・カード」として、様式や活用方法等の見直しを行っています。
平成30年にも「利便性の向上を図るため」として、改定も行われました。
ポイント①何のために書くのか?
ジョブ・カードは「求職者が職業能力を証明するためのもの」とされています
主に以下の「自分自身の基本情報」や「経歴」を記入します。自分自身の「過去」を振り返り「現在」に焦点を当て、これからのことを考えていくシートです。応募書類としても活用出来ますよ。
- 価値感
- 興味・感心事
- 強み
- これまでの取り組み
- 今後取り組みたいこと
- プログラム、インターンシップ(正課)への参加・取組状況 など
※就職経験あり・なしによってシートが変わってきます。詳しくは「記入例」の所で後述しています。
- アルバイト
- ボランティア経験
- 資格・免許
- 職業訓練の記録
- スキル
ポイント②「履歴書」や「職務経歴書」ではダメなのか?
ジョブ・カードは履歴書や職務経歴書といった「応募書類」として就活の際に役立てるだけではなく「自分自身のキャリアの振り返り」ができることや、「生涯を通じたキャリア・プランニング」「職業能力証明」のツールになります。
ジョブ・カードは、部分的に見ると従来の履歴書や職務経歴書と大きな差はありません。
しかし、自分自身の考え方やスキル、取り組みたいことを深く掘り下げて考えることが出来ますし、これまでの経験・資格・免許などをより詳しく証明することができます。
ポイント③国が推進しているとはいえ、周囲でジョブ・カードを作成している方を見かけない…
多様化する働き方や社会背景ににより、国のキャリアに対する取り組みが近年急速に大きく変化をしたとはいえ、まだまだ認知度が低いのが事実です。
キャリアの多様化に対する、日本の取り組みはまだ始まったばかりと言えます。今までは、ジョブ・カードを作成するのは「失業して初めてハローワークで作成した」という方が多く、在職中や在学中にジョブ・カード作成を推進されることは少なかったのが事実です。
認知度がまだまだ低いのが現状で、これから広まりを見せると言われています。
ジョブ・カードの形式、記入例
ジョブカードの種類は、主に以下の5つがあります。
- キャリアプランシート
- 職務経歴シート
- 職業能力証明シート
- 職務経歴書
- エントリーシート
5つのジョブ・カードの中でも、就活やキャリア相談で提出を求められるものは①~③のシート。個人でジョブ・カードを書きあげるときに躓くことが多いと言われているのも、その3つとなります。
出典:厚生労働省告示第408号「職業能力開発促進法第15条の4第1項に基づく様式」|厚生労働省
この3つのシートをさらに細かく分けると、以下のようになります。
- 就業経験あり
- 就業経験なし
※さらに細かく分けると、「職歴が長い、若年層の方」「職歴が短い、若年層の方」「在職者・転職希望ー職歴が長い、中高年層の方」など計12例が厚生労働省のサイトでは取り扱われています。
- 主に一通り
※厚生労働省のサイトでは、「1社分を1枚のシートに記入する場合」と「複数社分を1枚のシートに記入する場合」の例が挙げられています。
- 免許・資格
- 学習歴・訓練歴
- 訓練成果・実務成果
それぞれの記入方法を詳しく解説します。
①キャリアプランシート
キャリアプランシートについて、以下の2点の記入例を解説します。
- キャリアプランシート(職業経験あり)
- キャリアプランシート(職業経験なし)
キャリアプランシート(就業経験あり)
「キャリアプランシート(就業経験あり)」の記入項目は、主に以下の6点。
基本情報 | 自己情報を入力 例:○○ まさお・○年○月○日生まれ など |
価値観、興味、関心事項等 | 例①:学生時から英語に興味があり、外国語を学ぶことや習得すること、話すことに興味関心がある。また、サービス業にも長く携わっており、語学とサービス業を掛け合わせた仕事に就きたいと考えている。
例②:幼少期から大学生まで体操や新体操をしており、就労後もスポーツトレーナーとしてきたために、現在はスポーツメンタル分野でのコーチングに興味を持っている。 |
強み等 | 例①:国際空港に隣接したグローバルホテルに長年勤務しており、日常的に世界各国の方々へサービスを提供業務を行ってきたために、興味が強みに繋がっている。今後はさらにその分野を極めたいと思っている。
例②:スポーツに取り組む若年層への心身やメンタル・マインドなどの指導をしてきたために、スポーツに特化した指導を得意とする。 |
将来取り組みたい仕事や働き方等 | 例①:ホテルなどの企業ではなく、市区町村と連携を図った個々人での通訳業などもしてみたい。起業してそうした取り組みをすればいいのか、副業としての取り組みが良いのかが見えていない。
例②:自分自身の経年変化も考えると、機能的なスポーツコーチングよりも、メンタルケア・コーチング・栄養指導などにも特化していきたい。まだどのようにしていいのかは分かっていない。 |
これから取り組むこと等 | 例①:個人で起業する場合は、成功させたいと強く思っている。それを機に、今後の長くなるであろうキャリアについても改めて考え直したいと思っている。就労や起業について学ぶために、カウンセリングも受けようと考えている。
例②:既にコーチングセミナーに申し込みをしており、来月から受講予定。その後は、栄養に関する資格も取得していきたいと考えているが時期的な子とは未定。 |
その他 | 例①:TOEICの試験を本年受け直ししようと考えている(前回は2018年でスコアは760点)
例②:特になし |
今まである程度のキャリア人生を積み重ねてきた方がこのシートを書きあげることで、日頃働いている中では気付くことのできない自分自身を、改めて見つめ直すことが出来ます。
それによって、「今後、どんなことを大切にして生きたいのか」「実はどのようなことに興味を持っているのか」「得意・苦手分野」までが洗いだされ、これからのキャリアについてもイメージを定めやすくなります。
ジョブ・カードを作成する中でも、多くの方が書きあげることに躊躇・戸惑いを感じてしまうのが「キャリアプランシート(就職経験あり)」です。
一方で、キャリアコンサルタントなどの専門家が、相談者に一番先に書くことを推奨するのがこちらのシートでもあります。これからのキャリアを考える上で「目標設定」は必須です。
厚生労働省のサイトより、形式のイメージが確認できます>こちら
キャリアプランシート(就業経験なし)
「キャリアプランシート(就業経験なし)」の記入項目は、主に以下の6点。
基本情報 | 自己情報を入力 例:○○ まさお・○年○月○日生まれ など |
学校の過程で関心を持って取り組んだこと・取り組んでいること | 主に、ボランティア活動・ゼミ活動
貧困国・発展途上国に対しての関心が強く、ゼミに参加。ゼミ活動をする中で、複眼的な視点を身に付けることが出来、ボランティア活動に対しても積極的かつ意欲的に自らの参加意思を持って取り組んできた。 |
学校のキャリア教育で実施される科目・プログラム、インターンシップ(正課)への参加・取組状況 | 経済学研究科目に力を入れて取り組んだ。
発展途上国の持続可能な開発に資する人材育成プログラム(経済領域)である、既存の修士課程教育プログラム終了。 国際協力という観点からリーダー的存在になりたいと、国際協力のインターンシップにも年に2回は参加。 |
学校の課程以外で学んだ学習歴 | 主にボランティア活動やインターンシップを通して、英語力が上がった。また、支援プログラムのリーダー的な視点を持つようになった。 |
社会体験その他の活動 | サークルを立ち上げたことで、メンバーで考える大切さや意見が割れたときのチームワークの大切さを学んだ。 |
「キャリアプランシート(職業経験あり)」の6点と同じ内容 | 上記参照 |
社会人体験未経験の学生のかたも、ここで自分を振り返ることで「これから社会に出る自分」をイメージしやすくなります。
厚生労働省のサイトより、形式のイメージが確認できます>こちら
職務経歴シート
「職務経歴シート」の記入項目は、主に以下の5点。
期間 | 2017年4月~2021年8月現在 |
会社名・所属 | 株式会社○○、○○課 |
職名(雇用形態) | 正社員 |
職務の内容 | インフラエンジニアとして、公共機関や社会生活基盤となるサーバー構築やネットワーク管理、クライアント端末となるインフラを担当 |
職務の中で学んだこと、得られた知識・技能など | 365日24時間の安定稼働を求められる日本国民の暮らしを支えることの大切さや、即戦力、時間的生産性について継続的に学んでいる。
言語はLPIC、ORACLE MASTER |
これまでの職務経歴を記入するという意味では「職務経歴書」と変わりませんが、記入欄が横長のボックス2面タイプになっていて見た目は大きく異なります。
- 1面は勤務期間や職務内容、得られた知識・技能などを自分で記入
- 2面は、勤務または、活動を行った側が第1面の内容について確認したことを証明する欄で、証明を受けることで、就職活動の際の活動証明書として使用できます。
厚生労働省のサイトより、形式のイメージが確認できます>こちら
職業能力証明シート
職業能力証明シートについて、以下の3点の記入例を解説します。
- 職業能力証明シート(免許・資格)
- 職業能力証明シート(学習歴・訓練歴)
- 職業能力証明シート(訓練成果・実務成果)
職業能力証明シート(免許・資格)
「職業能力証明シート(免許・資格)」の記入項目は、主に以下の3点。
免許・資格の名称・取得時期 | 例①:ファイナンシャルプランナー(2020年11月取得)
例②:キャリアコンサルタント(2021年8がつ取得) |
免許・資格の実施・認定機関の名称 | 例①:日本FP協会
例②:JCDA 日本キャリア開発協会 |
免許・資格の内容等 | 例①:顧客より「収支・負債・家族構成・資産状況」などといった個々人の相談に対し、保険・住居・教育・将来的な金銭に関するライフプランニングや資金計画を提案
例②:学生・求職者・在職者等といったキャリアに関する相談に対して助言・アドバイスを行う国家資格を有する専門職である。 |
厚生労働省のサイトより、形式のイメージが確認できます>こちら
職業能力証明シート(学習歴・訓練歴)
「職業能力証明シート(学習歴・訓練歴)」の記入項目は、主に以下の4点。
期間 | 2015年4月~2019年3月 |
学科(コース)名 | ○○大学○○学部○○科 |
免許・資格の内容等 | ○○免許取得 ○○資格取得 |
内容等 | ○○学部に所属し、それにかんれんしたゼミに所属。研究課題として、○○の取り扱い方や○○の多様な視点を重点的に学んだ。 |
厚生労働省のサイトより、形式のイメージが確認できます>こちら
職業能力証明シート(訓練成果・実務成果)
「職業能力証明シート(訓練生か・実務成果)」の記入項目は、主に以下の3点。
企業実習・OJT期間内における職務内容(※1) | 経理事務として、職場内の経理の流れや入力業務、金銭の管理・事務的なさぎょうについて従事しつつ、先輩社員や上司の指導を受けた。 |
職務遂行のための基本的能力(三段階で評価) | 企業側・上司側の記入 |
技能・技術に関する能力(基本的事項と専門的事項を三段階で評価) | 企業側・上司側の記入 |
厚生労働省のサイトより、形式のイメージが確認できます>こちら
OJTとは?!
OJTとは「On The Job Training」の略で、新入社員などを育成する上で、現在多くの企業で取り入れられている手法となります。
日常の業務に就きながら教育されることで、日本だと「新入社員研修」や「研修期間」として取り入れられる場合が多くみられます。
必要に応じてキャリアコンサルタントやプロに相談
ジョブ・カードは、必要に応じてキャリアコンサルタントやハローワークのカウンセリングなどを活用して、プロに相談しましょう。
実際のところ、ジョブ・カードは枚数も多く、人によっては仕上げることが一苦労となってしまう場合があります。
これからの長いキャリアと真摯に向き合いたいと思う方はぜひ、プロのアドバイスを受けながら作成してみてください。
それによって、ジョブ・カードの効果をより感じることが出来ますし、就職活動やキャリア形成の促進に繋がります。
ジョブ・カードを作成するうえでの悩みや疑問点は…
厚生労働省の「ジョブ・カード制作総合サイト」に、無料でメール相談出来ます。
※ジョブ・カードに関することだけでなく、仕事をする上での悩みやスキルアップ・転職・就職に関する相談も乗って貰えますよ。
まとめ:【記入例有り】ジョブカードの書き方|上手く書ける徹底解説ガイド!
今回は「ジョブ・カード書き方のポイント」と「ジョブ・カードの書き方や記入例」をお伝えしました。
ジョブカードは一度書いておくとあらゆる場面で応用が効きますし、これからのキャリアプランニングや職業訓練をするときにも有効的に取り組むことが出来ます。
「人生100年時代」と言われています。長くなりそうなキャリア人生を考慮して、ぜひ活用してみてくださいね。
おっしまーい^^