キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラーは、名前が似通っているため、その違いを詳しく理解している人は多くありません。それに数年前までは双方は、ほぼ同一視されていました。
今回は、キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラーとの違いについて、以下の内容で比較したいと思います。
■キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラー■
- 資格の違い
- 取得方法を比較
- 仕事内容を比較
- キャリアカウンセリングに全般について、知識を深める
- どちらを目指す?
キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラーの違い|資格・取得方法・働く場所
キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラーは、2016年以前は明確な線引きもなく、同じ職業のように考えられていました。
なぜ、現在は2つの資格が線引きされるようになったのでしょうか。詳しく解説します。
資格の違い|国家資格と民間資格
キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラーの、一番大きな違いは以下の通り。
- キャリアコンサルタント・・・国家資格
- キャリアカウンセラー・・・民間資格
2016年4月に、キャリアコンサルタントが「国家資格」として制定されました。その背景としては、日本でも欧米のようにキャリアデザインをする傾向が強まったためです。
「キャリアプランが重要視されなかった」背景としては「終身雇用制度」が主流だったためです。一度入社した企業に、定年まで雇われることが当たり前だったために、日本では「キャリアをプランニングする機会」がほとんどありませんでした。
取得方法の違い|講座内容や費用・認定試験について
キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラーの資格を得るためには、双方ともに指定講座の受講と、認定試験が必要となります。比較図をご覧ください。
資格名称 | 資格取得 | 費用 |
キャリアコンサルタント | ・養成講座と国家試験 | 20万円~40万円程度 |
キャリアカウンセラー | ・養成講座と認定試験 ・資格がない場合もキャリアカウンセラーを名乗ることが可能 |
3万円~6万円程度 |
それぞれを、さらに詳しく解説します。
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントの国家試験を受けるためには、以下の2つに該当する必要があります。
- 厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した者
- 労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験を有する者
厚生労働大臣が認定した講習を受講・終了した場合、または実務経験が3年以上あれば国が定める講習の受講を免除することが出来ます。
講習は現在(令和2年4月)、次の21講習が厚生労働省で認定されており、講習時間や費用まで講習により違います。国家試験については、試験機関が2つあり概要は同じものとなります。
講習から試験までを以下にまとめてみましたので、参考にして下さい。
講習時間・期間 | ・140~155時間を終了 ・2ヶ月半程度~4ヶ月程度 (講習機関によって相違あり) |
講習費用 | 25万円~40万円前後 |
国家試験:機関 | ・日本キャリア開発協会(JCDA) ・キャリア・コンサルティング協議会(CC協議会) |
国家試験:内容 | ・学科試験 ・実技試験(論述試験・面接試験) |
国家試験:費用 | ・学科試験―8,900円(税込) ・実技試験―29,900円(税込) 【合計】38,800円(税込) ※2020年11月現在 |
キャリアコンサルタントになる方法にについては、こちらの記事で詳しくまとめていますので、ぜひご一読くださいね。
キャリアカウンセラー
キャリアカウンセラーの認定試験を受けるためには、認定講座を受講する必要があります。
キャリアカウンセラーの資格取得について、講習から試験までを以下にまとめてみましたので、参考にして下さい。
講習・試験機関 | ・キャリアカレッジ(民間) ・formie(民間) ・心理・福祉系専門学校 ・心理・福祉系大学 |
講習時間・期間 | 1か月~半年程度 |
講習費用 | 民間であれば3万円~6万円程度 |
試験:内容 | ・オンライン ・通信 ・大学や専修学校で受験 |
試験:費用 | 講習費用に含まれる |
※民間の資格であるため、試験内容や費用に差があります。詳しくは、各受講機関や大学・専門学校の学部にお問い合わせ下さい。
しかし、キャリアカウンセラーになるためには、必ずしも資格が必要とはされていません。未経験の場合でも、キャリアカウンセラーとなることが出来ます。
ただ、資格をもっていることで専門的な知識を示すことが出来ますし、未経験では仕事上つまづいてしまうことも多いもの。そのため、多くのキャリアカウンセラーが資格を取得してキャリア相談に取り組んでいます。
(資格を必須としないため)カウンセリングデビューするまでの既定のルートはありませんが、多くのキャリアカウンセラーが次のようなルートを経由してキャリアカウンセリングのデビューを果たしています。
- 資格を取得した後にカウンセラーになる
- 人材派遣会社や公務や一般企業の人事部門で経験を積む
- キャリアコンサルタントの国家試験に合格後、キャリアカウンセラーとして活動する
有能なキャリアカウンセラーがいる一方で、経験や実績を伴わないキャリアカウンセラーも存在する能力格差が、問題視され始めました。そのようなこともあり、国家資格としてキャリアコンサルタントが誕生したり、キャリアカウンセラーの認定資格の有無が就労時に求められるようになったと考えます。
仕事内容|主な違いについて
キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラーの仕事に大きな差はないものの、キャリアの相談における課題解決に向け「問題そのもの」や「クライアント」と真摯に向き合うことは、経験やスキルなしでは難しいものとなります。
主に次の4つの能力を「自分のスキル」として身に付けているかどうかが、ポイントとなると考えます。
- 傾聴力(聴く力)
- 相手を否定しないこと
- 相談者の気持ちを理解すること
- 社会的に成熟した人を目指すこと
見よう見まねで、このような素振りをすることは可能かもしれません。しかし、相談者のためにカウンセリング能力を発揮するには「知識や経験」と共に、上記の「意欲や熱意」も必要です。また、相談者にとっても資格の有無によって、安心してキャリア相談を任せられるかどうかの差が生まれると考えます。
キャリアコンサルタントの仕事内容については以下の記事にて詳しく解説しております。
働く場所についての違い
キャリアコンサルタントやキャリアカウンセラーは、働く場所がほとんど変わりません。
主に、次のような場所で活躍しています。
- 教育機関(高校、大学、大学院、専門学校など)
- 公的職業紹介機関(ハローワーク、人材派遣会社、高齢者就労支援センター、ジョブカフェなど)
- 企業内
- フリーランス
「教育機関」や「ハローワーク」「大企業」で、キャリア相談に特化したスペシャリストとして働く場合には「資格の提示」を求められることがほとんどです。
そのため、キャリアカウンセラーの資格を取得する人、さらにスキルアップを目指しキャリアコンサルタントの国家資格に挑戦する方が増えています。
キャリアコンサルタントが国家資格になるまで
2016年4月にキャリアコンサルタントが国家資格として誕生するまで、キャリアカウンセラーとキャリアコンサルタントは双方ともに民間資格で、同じ位置づけとされていました。正確には、資格認定のための団体の名称が異なっていただけです。
近年の日本の社会情勢は「終身雇用の崩壊」や「人生100年時代」「人材不足」と、雇用やキャリアに関する課題が山積みです。施策として、国も人材を増やそうと「2024年までに、10万人のキャリアコンサルタントを養成」するといった数値目標を掲げています。
そのため、今後キャリアコンサルティングのニーズが高まることを予想し、専門性を持ち個々人のキャリアに向き合うことのできるキャリアコンサルタントが国家資格として誕生しました。
キャリアカウンセリング資格一覧|キャリアコンサルティング技能士についても解説
キャリアカウンセリングを行うことができる資格にはには、キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラーだけでなく、キャリアコンサルティング技能士もあります。
キャリアカウンセリングの資格の階級を、以下にまとめてみましたのでご覧ください。
資格名 | 資格の違い | 資格のベースライン | キャリアカウンセリング ベースライン概要 |
キャリアカウンセラー | 民間資格 | 導入レベル | 数十時間に渡る講義・演習の学習 |
キャリアコンサルタント | 国家資格 | 標準レベル | キャリア相談の 実践に必要な知識とスキルを習得 |
キャリアコンサルティング技能士 | 国家技能検定2級 | 熟練レベル | 幅広いクライアントに対し「厚みと広がり」を持った支援が出来る |
キャリアコンサルティング技能士 | 国家技能検定1級 | 指導レベル | キャリアカウンセリングについて 指導できる人 |
参考:厚生労働省>キャリアコンサルタント能力要件見直し概要
厚生労働省は現在「キャリア形成の支援者」として、キャリア相談の専門家を上図の4つのレベルに分けています。キャリアコンサルタントとキャリアコンサルティング技能士1級・2級が国家資格となります。
キャリアコンサルティング技能士1級・2級は、キャリアコンサルティングの実務経験を積み重ねることで目指すことが可能です。
キャリアカウンセラー(民間資格)の役割|意味づけは?!
2016年4月にキャリアコンサルタントが国家資格となり、厚生労働大臣認定の資格制度がスタートしたため現在「キャリアカウンセラー」のみが民間資格となっています。
そのため「キャリアカウンセラーより、キャリアコンサルタントの方が意味がある」と感じてしまうかもしれませんが、そうではありません。
国家資格であるキャリアコンサルタントの受験を受けるための講習のなかのひとつに「キャリアカウンセラーの資格試験」があります。(※項目としての名称は「厚生労働大臣認定キャリアコンサルタント養成講習」)
このため、2つの資格は無関係ではなく、関係性は残された状態です。そのため2016年4月以降には「キャリアコンサルタントが優位」なのではなく、キャリアコンサルタントの受験資格を得るための学びのひとつにキャリアカウンセラーが存在していると言えます。
「キャリアの相談を受けるプロ」までの道筋としての「キャリアカウンセラー」言えるのではないでしょうか。
キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラー、どちらを目指すのがおすすめ?
この記事にたどり着いた方のなかには、キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラーの「どちらを目指せばいいのか」と、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
ここまで読むと、「最初からキャリアコンサルタント」の資格を目指した方が「得なのではないか」と考える方はおおいと思いますが、そうでもありません。キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラー、それぞれの良さがあるからです。
「どのようになりたいのか」「誰の役に立ちたいのか」で、進むべき道は変ってきます。以下をご覧ください。
キャリアコンサルタント | キャリアカウンセラー | |
主に どのように活用したいのか |
・いずれ仕事にしたい ・仕事のスキルアップ ・いずれ独立したい |
・いつか、キャリアコンサルタントになりたい人(今ではない) ・業務に取り組む中で、キャリア相談も知見に取り入れたい人 |
主に誰の役に立ちたいのか | ・キャリアの悩みについて課題の多い人 | ・キャリアの悩みを抱えている人 (比較的、課題の少ない人) |
メリット | ・キャリアの専門的知識を身につけれる ・将来の進路の幅が広がる ・国家資格である |
・キャリアカウンセリングについて数十時間で要点を学べる ・講習費用が安い |
デメリット | ・講習費用が高い | ・民間資格であるために国家資格よりは信頼値が劣ってしまう場合が多い |
本格的にキャリアカウンセリングの専門的知識を身につけ、人の役に立ちたいと既に決めている場合は「キャリアコンサルタント」がおすすめです。
キャリアカウンセリングに興味がある人、費用をあまりかけずに身につけたい人や、スキルとして取り入れたい人は「キャリアカウンセラー」を窓口として学ぶことをおすすめします。
まとめ:【徹底比較】キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラーの違い|働き方の違いに注目
今回は、キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラーの、主に働き方の違いについて解説してきました。
2つの資格の働き方に大きな差はないのですが、資格に大きな差があります。
- キャリアコンサルタントは国家資格
- キャリアカウンセラーは民間資格
日々、物凄いスピードで変化し続ける社会問題と、それに伴うキャリアの多様性。「これから、どのような働き方をすればいいのか」と考える人は、ますます増えるのではないでしょうか。
加速するキャリア相談に対し、多様な視点・角度から提案をし、誰かの人生をより良い方向へ導いてあげることが出来るキャリアカウンセリング業って、素晴らしいことだと思います!
おっしまーい!