2021年6月3日、男性の育児休業取得を浸透させるための「育児・介護休業法の改正」が、衆議院本会議にて成立しました。
まだ開始されていない新制度なので、現在、出産予定を控えたご夫婦や「これから」を考えている方は、不明点や疑問も多々あることでしょう。
今回は「男性の育休義務化」について詳しく解説します。
- 男性の育休義務化について詳しく解説
- 育児休業に関する特例
- 男性の育休が浸透することで、変わりゆく社会
【男性の育休義務化】について詳しく解説
男性の育休義務化となる「育児・介護休業法の改正」について詳しく解説します。
これからスタートする「男性の育児休業」について、共働き世帯の育児がどのように変わっていくのでしょうか。
多くの方から寄せられる質問をまとめてみましたので、ぜひ参考にしてくださいね。
【男性の育休義務化】いつから?
2022年4月から周知が開始され、秋から本格的に開始とされています
◇【男性の育休義務化】開始時期について
2022年4月~ | 周知・意向確認義務 | 対象の従業員に対し、企業が個別に周知し取得を促すよう義務付け |
2022年秋頃~ ※2021年9月現在:2022年10月頃を目処にといわれています |
出生時育休制度の創設 | 対象の従業員に対し、出産直後に育休をとりやすくする制度化 |
これまでも、多くの企業が「子育てのしやすい職場」を目指し、男性の積極的な産育休を取得できるように企業努力に取り組んできましたが、あくまで「企業努力」の範囲でした。
今回の制度改正においては「義務化」することが趣旨・目的となります。
【男性の育休義務化】の具体的な動向
- 男女問わず該当従業員へ育児休業が取得できる旨、およびその内容の通知・説明
- 取得を促すための意思確認
【男性の育休義務化】期間は?
子の出生から8週の間に合計4週間分(2回まで分割可能)
育児のスタートは出産日からで、4週間の育休を2回に分けて取得することができます。分割を活用して、職場での繁忙期を回避することができるメリットもあります。
具体的なイメージは、以下図をご覧ください。
【男性の育休義務化】「期間に関わる変更点」の主な特徴
- 分割して取得が可能
- 出産日から8週間の間に、4週間の育休取得ができる
【男性の育休義務化】申請先は?
職場へ2週間前までに申請が必要
育休取得の申請期限は、原則として休業の2週間前までに職場へ申請します。
これまでは「1カ月前」の申請が必要でしたが、改正後は「2週間前」に変更されました。
【男性の育休義務化】給与は?
これまでの通常育休と同様に雇用保険からの給付金も支給されるます(※上限有り:以下解説します)
男性の育休義務化における育休中の収入については、今までと変わらずハローワークより休業給付金が支給されます。支給額については、以下を参考にしてください。
◇男性の育休義務化における育休中の休業給付金支給額
出産直後~6か月目まで | 育児休業開始時の賃金の67% | 【社会保険料免除なし】
・健康保険料 |
7カ月以降~ | 育休児業開始時の賃金の50% | 【社会保険料免除あり】
・健康保険料 |
法律では労使合意が必要とはなりますが、生後8週間であれば、育休取得日数の半分を上限に、仕事をすることも認められています。
労使合意とは?
労働条件や福利厚生について、労働者と事業主の間で交わされる決定事項のこと。労働従業員の2分の1以上と事業主の合意によって成立。
具体的には、在宅ワークが主流化する中で「育休中でも可能な形で、仕事ができる」として、取得の緩和が想定されています。
多くの企業では、実際の支給額について収入の8割程度が育休中も保障されると打ち出しています。さらには職場の就業規則において、育休中もテレワークなどの対応も可能となっているようなので、それぞれの職場と夫婦間での話し合いをしてみましょう。
◇豆知識:給与保証されることで、企業への財源損失はないの?
育児休業給付金の財源は雇用保険から出ているため、会社の給与負担はありません。また、育休取得による助成金なども国から多数用意されています。結果として、男性の育休取得が「会社への利益貢献に繋がる」と考えて問題ないでしょう。
【男性の育休義務化】非正規雇用者は対象となる?
法改正によって、非正規公用の方も対象となりました
これまで育休を取得できなかった「有期契約の非正規労働者」の対象者の範囲が拡充することになりました。
「雇用期間が1年以上なければ育休を取得できない要件」も改訂され、育休を取得できるように変更されています。
ただ、厚生労働省の令和3年6月9日公布の雇用保険法では、以下の文言も記載・定められています。
ただし、労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することを可能とする。
引用:厚生労働省>育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の概要より
「自分は対象者なのかどうか」を、必ず職場に確認を取りましょう。
【男性の育休義務化】必ず取得すべきなの?
「男性育休 ✕ 義務化」といわれると、「男性も必ず育児休業を取得しなければならない」と考える方も多いのですが、そうではありません。
育児・介護休業法の改正による、「男性の育休義務化」を、口語的にいい換えると「妻のために育児休暇を申請したいけれど『言い出しにくい』気持ちの解消する」ためのものです。
企業家ら育休取得対象の男性へ「制度についての説明」と、それによる「取得の意向」を、個別確認することが義務化されたもので、家庭環境によって必要がない場合は「育休」を断ることも可能です。
【男性の育休義務化】詳細のまとめ
もちろんです!以下をご覧ください
◇法改正による男性の育休義務化のポイント
- 2022年4月から義務化始動、10月頃から本格始動
- 4週間の育休×2回、または8週間まとめての取得が可能
- 夫婦交代制として、育児休業を取得することも可能となる
- 有期雇用の非正規雇用労働者の方も育児休業の取得が可能となる
さらに、具体的に図を活用してまとめてみましょう。
現在 | 2022年4月~ | 2022年秋頃 ※およそ10月以降~ |
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【企業側】
育児休業の推進と説明 |
努力範囲 | 義務 | 義務 |
育休の分割 | 不可 | 不可 | 可能 ※2回 |
有期雇用者の育休取得 | 不可 | 可能 | 可能 |
給料保証 | 有り | 有り | 有り |
閣議決定・法改正された育児・介護休業法の改正ですが、厚生労働省は2025年までにこれらの法改正・整備を通じて、男性の育休取得率を30%まで引き上げていくことを目標に掲げています。
「育児休業に関する特例」についても解説
育児休業に関する特例にの中でも特に気になる「育休の延長」。延長にに関する3つの事柄に注目してもらいたいと思います。
No | 法令名 | ポイント |
① | 出産後8週間以内の父親等の育児休業に関する特例 (法第5条第2項関係) |
育休を延長する場合の特例 |
② | 育児休業の再度取得要件等の見直し (則第4条及び第9条関係) |
育休を再取得する場合について |
③ | 育児休業申出に対する事業主による休業期間等の通知 (法第6条第1項、則第6条及び則第7条関係) |
専業主婦(夫)や婚外子について |
図にしてまとめてみましたので、参考にしてください。(上下図、同じNoを照らし合わせてくださいませ)
No | 改正前 | 改正後 |
① | 配偶者の死亡等の特別な事情がない限り、2度目の取得はできないとされていた | 特別な事情がなくても、再度の取得が可能 |
② | 改正前は配偶者や子の死亡や離婚などの理由のみとされていた |
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③ | 改正前は、労使協定を定めることにより、配偶者が専業主婦(夫)や育児休業中である場合等の労働者からの育児休業申出を拒める制度となっていました |
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参考:厚生労働省>改正育児・介護休業法の解説 より
【男性の育休取得】「男性の育休義務化」によって期待されること
【男性の育休取得】「男性の育休義務化」によって期待されることは、主に以下の2つとなるのではないでしょうか。
- 社会全体の意識改革
- キャリアの意識改革
詳しく解説します。
社会全体の意識改革
男性の育休取得が広まれば、社会全体の意識改革にも繋がります。
「出産」という人生の素晴らしいターニングポイントにおいて、「仕事を休むことが申し訳ない」と感じてしまう方はとても多いはず。
しかし男性の育休取得が、労働者を取り巻く「産育休」へのネガティブな意識を、これからの社会課題としてポジティブに捉え「誰もが働きやすい社会」となることが期待されています。
キャリアの意識改革
男性の育休取得が広まれば、キャリアの意識改革にも繋がります。
また、現在よく耳にするようになったSDGs活動(※1:以下説明有り)の中心国も目指せます。
キャリアにおけるジェンダーの差(男女差)をなくせば、妊娠・出産といった、女性だけが抱えがちなキャリアブランクなどの課題の改善にも繋がります。
「いまさら聞けない」SDGs活動ってなに?
社会問題リテラシーの高い方や、公務・企業の人事・広報に関わる方なら耳にしたことがある「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」。
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」です。
17のゴールと169のターゲットから構成されており、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓い、日本としても積極的に取り組んでいます。
参照:外務省>SDGsとは?より
SDGsの17の目標を街中で見かけることも増えましたが、詳しく知らない方も多いために、ここで簡単に紹介しておきます。素敵な目標ばかりなので、ぜひ目を通して意識してみてくださいね。
目標1 [貧困] | あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる |
目標2 [飢餓] | 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養の改善を実現し、持続可能な農業を促進する |
目標3 [保健] | あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する |
目標4 [教育] | すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する |
目標5 [ジェンダー] | ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う |
目標6 [水・衛生] | すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する |
目標7 [エネルギー] | すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する |
目標8 [経済成長と用] | 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する |
目標9 [インフラ、産業化、イノベーション] | 強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る |
目標10 [不平等] | 国内及び各国家間の不平等を是正する |
目標11 [持続可能な都市] | 包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する |
目標12 [持続可能な消費と生産] | 持続可能な消費生産形態を確保する |
目標13 [気候変動] | 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる |
目標14 [海洋資源] | 持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する |
目標15 [陸上資源] | 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する |
目標16 [平和] | 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責 MDGs 任のある包摂的な制度を構築する |
目標17 [実施手段] | 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する |
まとめ:【男性の育休義務化】2022年4月の法改正による疑問を徹底解説!
今回は、男性の育休義務化について詳しく解説してまいりました。
法改正によって、柔軟な育休取得が可能となることが望まれていますが、前例のない企業にとっては、制度浸透に時間がかかることもあるでしょう。
そんな社会に早くなりますように!
おっしまーい^^