産業カウンセラーとキャリアコンサルタントは、双方が仕事への援助・サポートといった目的をもっているため、同じような仕事と思われやすいですが、資格取得から仕事内容、関わる業界まで大きく違います。
今回は、産業カウンセラーとキャリアコンサルタントとの違いについて、以下の内容で比較したいと思います。
■産業カウンセラーとキャリアコンサルタント■
- 受験前の講座を比較
- 資格取得を比較
- 求人や待遇を比較
- 仕事内容を比較
- どちらを目指す?
産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの違い
産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの違いは以下の通り。
- 資格の違い(民間資格と国家資格)
- 養成講座の違い
- 試験方法の違い
- 仕事内容の違い
- 働く場所の違い
思ったより多いのではないでしょうか。
2つの資格には次のような共通点があるために、同じような資格だと考えられてしまいがちです。
- 双方が働く人や企業の支援をする目的を持つこと
- 双方が試験を受けるための、講習の受講が必要なこと
いま現在どちらを取得しようか悩んでいるのであれば、ここでしっかりと確認してくださいね!
資格の違い
まず資格そのものに大きな違いがあります。
- 産業カウンセラーは「民間資格」
- キャリアコンサルタントは「国家資格」
産業カウンセラーは「一般社団法人日本産業カウンセラー協会」が認定する民間資格となります。
補足2001年までは、労働省が認定国家資格でしたが技能審査に除外されて、以降は民間資格となりました。
キャリアコンサルタントは「厚生労働省」が認定団体となる国家資格となります。
養成講座の違い
産業カウンセラーとキャリアコンサルタント、それぞれの『講座の違い』を比較してみましょう。
産業カウンセラー | キャリアコンサルタント | |
受講資格 | 成人であること | 未成年でも可 *保護者の同意が必要な場合有り |
受講期間 | 6か月または10ヶ月
*いずれのコースも講座内容は同じ *下期6か月コースおよび10か月コースは開催しない地域もあり |
最短2ヶ月半~約半年
多くの講座機関が年に複数回開催 |
学習スタイル | 1. 面接の体験学習
・昼間コース:15~16日間 ※いずれも104時間通学 2. ライブ理論講義 ・2日間・12時間通学 3. Web配信講義視聴 ・32時間相当 e-Learning 4. 理解度確認テスト ・13時間相当 e-Learning 5. 実習に関する在宅課題6課題 ・28時間相当 |
・通信のみ
・通信または通学の組み合わせ |
受講費用 | 297,000円 (教材費、消費税込) |
250,000円程度~400,000程度 |
教育訓練給付金適用 | ◎ | ◎ |
申込先 | 最寄りの 一般社団法人 「日本産業カウンセラー協会」※1 |
21講習が厚生労働省で認定中 (令和2年4月1日現在)※2 |
参考:一般社団法人「日本産業カウンセラー協会」>6か月コースと10ヶ月コースの比較より
参考:厚生労働大臣が認定する講習 より
講座内容等は、社会情勢などにより変更される場合もあります。必ずそれぞれのホームページの案内・要項にてご確認ください。
※1)産業カウンセラーの講義や試験日程について確認したい場合は、こちらでご確認ください。
※2) キャリアコンサルタントの養成講座を行っている機関や取得方法について、より詳しく知りたい方は【2021年最新】キャリアコンサルタントになる方法|受験資格・難易度・合格率・通信のみの講座も始まりました!もあわせてお読みください。
試験についての違い
産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの、2020年中に実施された試験を元に、その違いも比較してみましょう。
産業カウンセラー | キャリアコンサルタント | |
受験資格 | ・試験日に20才以上で、産業カウンセラー養成講座を修了した者
・心理学関係の大学院修了者で、次に該当する方→こちら |
・厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した者
・労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験を有する者 |
申し込みサイト | ・一般財団法人 日本産業カウンセラー協会 | ・日本キャリア開発協会 |
年間試験回数 | 年1回開催予定
・学科試験日(2021年度) 〈次回〉 ・実技試験日(2021年度) 〈次回〉 |
・学科+実技(論述)試験日(2021年予定)
3月・6月・10月の3回の予定
・実技(面接)試験日(2021年予定) 3月・7月・11月の3回の予定 |
受験受験費用 | ・学科試験:11,000円(税込)
・実技試験:22,000円(税込) ・【合計】38,800円(税込) ※2020年1月の受験より |
・学科試験―8,900円(税込)
・実技試験―29,900円(税込) ・【合計】38,800円(税込) ※2020年11月現在合格後の登録 |
合格後の登録 | ・合格後に、協会での資格登録が必要
・5年毎に登録更新する必要 ※尚、更新しなくても資格が抹消されるわけではない |
合格後に、キャリアコンサルタント名簿に登録する必要あり
*5年ごとに更新する必要あり |
仕事内容の違い
産業カウンセラーとキャリアコンサルタント、「それぞれの目的」や「解決する課題」の違いを比較してみましょう。
産業カウンセラー | キャリアコンサルタント | |
主に『誰の』 | 働く人たち | ・労働者
・学生 ・求職者 |
どのような悩みを | ・職場の人間関係の悩み
・職場の環境の問題 |
・職業の選択
・職業生活設計 ・職業能力の開発及び向上 |
何を用いて | ・心理的手法
・傾聴 |
・傾聴
・助言 ・指導 |
どのように解決するのか | 相談者自らが、自分の力で解決できるように、産業カウンセラーが援助する | キャリアコンサルタントが、話し合いを先導し答えを見つけてあげ、それを達成するためにサポートする |
具体例 | ・会社でのハラスメント被害
・将来の不安 ・病気を抱えたための業務への支障 |
・今後のキャリアについの悩み
・出産退職後の、セカンドキャリアについて ・大学卒業後の進路について ・職業安定所でのキャリア支援 ・企業内でのキャリアカウンセリング |
産業カウンセラーは、心理学的手法を中心に相談者の悩みを受け止め、サポートすることが最大の目的です。問題解決策を提示するよりも、話を聞いて本人が自らの力で解決できるようにサポートします。
その一方で、キャリアコンサルタントは、自らの知識や経験を活かし相談者の抱えるキャリアの悩みの問題解決を目的にしています。
いずれも双方の共通点として、相談者が抱えている問題や悩みを傾聴することが大切です。
働く場所の違い
産業カウンセラーとキャリアコンサルタントは、働く場所も違います。
産業カウンセラー
産業カウンセラーは「働く人」のいる場所であれば、どこででも活躍することができます。主に、以下のような場所で活躍しています。
- 民間企業
- 公的機関
- 医療・福祉施設
- 非営利団体
産業カウンセラーは、職場で働く人たちの「仕事のトラブル」や「人間関係の課題」をサポートする仕事であるため、特定の職場の中で雇われて活躍する場合が多いです。
しかし、職場によっては「スクールカウンセラーや心理カウンセラー」といった類似した資格が存在し、企業も多くのカウンセラーを必要としていない場合が多いのが現状です。そのため、産業カウンセラーとして単体で働いている人は、とても少ないようです。
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、仕事について悩んでいる人たちの「これからのキャリア」についてを築き上げていく仕事です。特定の職場で縛られて働かない人が非常に多いのが特徴。
複数の企業や公的機関などにおいて、相談者の「キャリアにつての悩み」を傾聴し、最適な働き方や職場を相談者とともに考え、提案します。
相談者に求められながら活躍の場を広げ、主に次のような場所で活躍しています。
- 教育機関
- 公的職業紹介機関(ハローワークなど)
- 企業内
- フリーランス
就労について|求人の多さ・待遇など
産業カウンセラーとキャリアコンサルタント、それぞれの「求人」や「待遇」について考えてみたいと思います。
双方ともに勤務先や雇用形態に幅があり年収においても、ばらつきがみられるため一例として参考にして下さい。
産業カウンセラー
産業カウンセリングが浸透していないためか、求人や年収のデータが少なく、厚生労働省などで一括で調査されたものを見つけることができませんでした。そこで、一般論としてのデーターを解析してみました。
求人
産業カウンセラーに限りませんが1つの企業に、多くのカウンセラーが雇用されることはあまりありません。産業カウンセラーの資格を取得する方は、既にカウンセリングや相談のサポート業務をしている方が、さらにスキルを高める目的に資格取得を目指すケースが大多数となります。
カウンセリング系の仕事は全体を通して、派遣や非常勤といった非正規の求人も多く、安定してひとつの場所で働けている人は少ないのが現実です。そのため、キャリアアップの目指し方をしっかりと見極める必要があります。
カウンセリングや相談業務の分野で専門性を高めたいと考えるのであれば、産業カウンセラーの資格と併用して「公認心理士」や「スクールカウンセラー」、介護や看護の分野での経験や勉強を積み重ね権威性を高め、さらなるスキルを積む人も多いようですよ。
待遇
収入のデーターを集めてみたので確認してみましょう。
【正規雇用の場合】
・民間企業 ・医療や福祉の現場 ・非営利団体 |
200万円から400万円平均
(企業の希望に準じます) |
【非正規雇用の場合】
・民間企業 ・医療や福祉の現場 ・非営利団体 |
時給にして
1500円~1800円程度 |
地方公務員 | 500万円前後~
安定した収入と定期的な昇給の確保あり |
上述したように非正規雇用として雇われる場合が多い産業カウンセラー。公務員で働く場合には、元より公務員で後に産業カウンセラーとなった方も多いようです。
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントの求人と待遇も確認していきましょう。
求人
厚生労働省の出した、キャリアコンサルティングの現状と課題の統計より、キャリアコンサルタントは正規雇用で働く人が増えつつあります。しかし、まだまだ非正規雇用の人も多いのが現状です。
コロナ禍・Iターン・Uターン・ニート・就職難民学生・非正規雇用で働く若者の増加、産後の女性のキャリア難により、キャリアに関する悩みを抱えた人は多く、ニーズが高まることが予想されます。しかし、キャリアコンサルタントの求人は増えてはいるものの、正社員枠が多いとはいえません。
まずは非正規雇用として働き、スキルや経験を身につけてから独立や正社員を目指す必要もでてくるかもしれません。キャリアコンサルタントの資格を取得した後に「自分のキャリア」のことも考える必要がありそうですね。
待遇
2018年に「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」より「キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査」としてキャリアコンサルタントの給料・年収に関するデータが公表されています。
アンケートに回答したキャリアコンサルタントの年収は、以下の通り。
200~400万円未満 | 33.2% |
400~600万円未満 | 21.5% |
600~800万円未満 | 14.1% |
およそ35%以上の人が400万円以上の民間企業平均以上の年収を得ているのにも関わらず、400万円未満の人の割合が多いのも特徴ですね。
その理由として、やはり非正規雇用として働く人の多さが考えられます。都内の求人から収入を確認してみました。
就労場所 | 勤務地 | 収入 |
人材サービス会社 | 渋谷区 | 年収:360~840万円 |
コンサルティング会社 | 千代田区 | 月収:33万~64万円 |
人材サービス会社 | 渋谷区 | 年収300万円~500万円 |
参考:indeed
令和2年発表された国税庁の民間給与実態調査において、日本人の平均年収は 436万円だったため、キャリアコンサルタントの年収は平均またはそれ以上と考えられます。
産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、どちらを目指すのがおすすめ?
「どちらの資格を取得するのがおすすめなのか」というのは、[keikou]どちらの仕事内容を目指したいのかによります。[/keikou]
職場内で、みんなが抱えているハラスメントや人間関係、職場環境の課題を解決したいと考え、そのためのキャリアアップを目指すのであれば産業カウンセラーがおすすめです。
また、相談者のキャリアに関する悩みを、公的機関や人材派遣会社、ハローワークまたはいずれ独立したいといった場合はキャリアコンサルタントがおすすめです。
自分が、「誰のどのような悩みを解決したいのか」よく考えてみて下さいね。
まとめ:【比較】産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの違い|試験から仕事内容まで
産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの主な違い
- 資格の違い(民間資格と国家資格)
- 養成講座の違い
- 試験について
- 仕事内容
- 働く場所の違い
就労について|求人・待遇など
どちらを目指すのがおすすめなのか
試験を受けるための講座から就労に至るまで多くのことが異なる、産業カウンセラーとキャリアコンサルタント。双方とも、相談者の働く人の悩みを解決する、とてもやりがいのある仕事となります。
今回紹介した内容を参考に、ぜひ自分の目指したいカウンセラーを見極め、講習も試験も夢も頑張って下さいね!
おっしまーい^^