主婦は独身の頃と比べライフスタイルが大きく変化し、仕事にも影響を与えます。主婦が、家事や家事や育児と並行して働くことは大変なために「働き方の見直し」を検討する人も多いものです。
今回は「主婦に的を絞ったキャリア相談」のなかでも、特に多い「主婦に最適な働き方」について解説します。「時間・お金・今後の暮らしや働き方」に的を絞って考え、主婦におすすめの働き方も紹介します。
セカンドキャリアの見つけ方や取り組み方についてはセカンドキャリアとは?取り組みや見つけ方・世代別ポイントについて解説の記事がおすすめです。
「働き損は嫌!」主婦が効率よく働くために考えるべきこと
主婦が効率よく働くために考えておくべきことは、主に次の3つ。
- 労働に使える時間
- 労働により得たい報酬
- これからの暮らしと仕事について
主婦にとって仕事の悩みは「課題の板挟みの状態」が挙げられます。家事と育児の責任を多く抱え込んでいるために「無理のないように働きたい」気持ちと「働いて、お金を稼ぎたい」気持ちの「課題の板挟み」になってしまいます。
さらにもう一つ、主婦のキャリアについて考えて欲しいのは「今後の、暮らしや働き方」のこと。育児の期間は限られています。自分の長い人生とキャリアを照らし合わせて考えたときに、子どもの手が離れてからのことなど考えておく必要もあります。
次からは、主婦の仕事における「時間」「報酬」「今後」に、要素を切り分けて解説します。
【主婦のキャリア:時間編】「どれくらいの時間、働きたいのか」を考える
まず「どのくらいの時間、働きたいのか」または「働けるのか」を考えましょう。
主に、次の3点に注目します。
- 働ける時間について考える
- 有休について知る
- 社会保険について知る
働ける時間について考える
主婦業をしながら、自分が働ける時間について考えてみましょう。1日は24時間と限られています。睡眠時間、家事や育児、身支度の時間などを差し引き「労働に使える時間」を洗い出します。
働きに出れば、これまで順調だった家事や育児の効率が悪くなることもあります。疲労を蓄積しながら、家事や育児を並行していては体調にまで支障が生じてしまいいますし、「何のために働きに出たのか」と後悔することになってしまうでしょう。
有休について知る
主婦には、家の諸事情や子どもの行事によって、有休の取得が必然的に増えてしまいますよね。
有給休暇を取得することは、労働法に定められた労働者の権利となります。
企業も労働者の有給取得を拒否・指導することや、有休の取得によって待遇を変えることは出来ません。有休の付与日数も考慮し、主婦のキャリアについて考えましょう。
労働基準法の定める、正職員とパートの有給休暇の付与条件について解説します。
正社員の場合
正社員の、有給休暇の条件と付与日数は以下となります。
◇パートの有給休暇付与条件◇
- 雇われた日から、6か月継続して働いている
- 契約上の全労働の、8割以上を出勤している
上記2点を満たしていれば、雇用半年目から10日間以上の有休を付与されることとなります。
法で定められている有給休暇の付与日数は、勤務年数が長くなるにつれて増加します。以下の表にて確認ください。※企業によっては、追加で給付される場合もあるため、確認してみましょう。
勤続年数 | 半年 | 1年半 | 2年半 | 3年半 | 4年半 | 5年半 | 6年半 |
有休付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
1度取得した有給休暇の有効期限は2年間と定められています。よって、1度に保有できる有給休暇の最大日数は40日となります。
パートの場合
パート(アルバイト含む)の、有給休暇の条件と付与日数は以下となります。
◇パート(アルバイト含む)の有給休暇付与条件◇
- 雇われた日から、6か月継続して働いている
- 契約上の全労働の、8割以上を出勤している
上記2つの条件を満たし、所定の「労働時間が週30時間以上」または「所定労働日数が週5日」となる、フルタイムでの労働の場合は、パートタイム勤務でも正社員と同じ10日分の有給が付与されることとなっています。
◇雇用より、6ヶ月以降にもらえる有給休暇の日数
週の 所定労働日数 |
1年間の 所定労働日数 |
半年 | 1年半 | 2年半 | 3年半 | 4年半 | 5年半 | 6年半以上 |
1日 | 48~72 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
2日 | 73~120 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 |
3日 | 121~168 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 |
4日 | 169~216 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
パートタイム勤務では、入社 半年後から付与される有給休暇の日数は、勤務日数に応じて決まります。
労働時間による、社会保険制度について知る
主婦のキャリアを考える上では「社会保険制度」についても、知っておきましょう。
主婦であれば「夫の扶養範囲」という言葉を聞いたことがある方も多いはずです。これを気にかけるのは、夫の扶養範囲の中で働けば、妻が個人で社会保険に加入する必要がないためです。妻の給与から社会保険が天引きされず、夫の職場が負担することを望む方が気に掛けるポイントとなります。
「夫の扶養範囲」における、社会保険についてを大まかに言うと
- 正社員は社会保険に強制加入
- パートタイム勤務は条件を満たした場合に社会保険加入
となります。詳しく解説します。
正職員の場合
社会保険(健康保険・厚生年金)の適用事業所であれば、そこで常時勤務する70歳未満の労働者は、報酬や年金受給の有無にかかわらず、法律に従って強制的に社会保険に加入することとなります。
要は、妻も正社員またはフルタイムに近い常時勤務をしていれば、強制的に社会保険加入となります。※原則70歳以上の方は健康保険のみの加入となります。
パート・アルバイトの場合
パート・アルバイト労働者の場合は、次の条件を満たした場合に社会保険に加入となります。
- 週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上を超えた場合
- または、次の「短時間労働者の要件(※1)」すべてを満たす場合
(※1)◇短時間労働者の要件◇
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 勤務期間1年以上またはその見込みがある
- 月額賃金が8.8万円以上
- 学生以外
- 従業員501人以上の企業に勤務している
ここで、社会保険における「収入の壁」についても解説します。後述する税制度上の「収入の壁」と間違えられやすいですが、ここでは切り離して考えます。
主婦として、パートタイム勤務や職場復帰を検討する中で「収入の壁」という言葉を耳にした方も多いと思いますが、社会保険における「収入の壁」は、「106万円の壁」と「130万円の壁」です。
社会保険上の報酬のボーダーラインについて、詳しくは下図をご確認下さい。
年収(この額を超得た場合) | 社会保険上の扶養について |
106万円 | パート勤務先の、社会保険が発生するボーダーライン 上述した、(※1)「短時間労働者の要件」を満たす場合は、加入が必須となる |
130万円(※2) | 夫の社会保険扶養の境界 パート勤務先での年収が130万円を超えると、夫の扶養を外れ 自身で国保または勤務先の社会保険に加入する必要がある |
(※2)130万円は1年間の総収入ではありません。社会保険に加入する直近3か月の収入の平均に対して12を掛けた金額となります。収入が上がってきて不安を感じる方は職場の事務職の方に相談してみましょう。
「(※2)」で解説したように、ここでの「収入の壁」は自分で判断するのは難しいものとなります。仕事を始めるときに、職場の方に相談し「社会保険の扶養範囲内」で働きたいことを伝えておきましょう。収入のボーダーラインを超えそうなときに事務・総務の方から声をかけて貰えることがあります。
参考>国税庁:配偶者特別控除
【主婦のキャリア:お金編】「どれくらい稼ぎたいのか」を考える
働ける時間を算出したら、次に「どのくらいの稼ぎたいのか」も考えてみましょう。
主に、次の2点に注目します。
- 稼ぎたい報酬を考える
- 年収の壁について知る
稼ぎたい報酬を考える
「稼ぎたい報酬額」について考えてみましょう。
闇雲に稼ぐのではなく「主婦としてこれくらいは稼ぎたい」と、自分基準を知っておくことが大切です。主婦として稼ぎたい報酬の考え方は、次のステップ①と②を参考にして下さいね。
【ステップ①】
主婦の報酬:自分基準を考えるポイント | 具体案 |
夫婦の収入をオープンにして、収入会議 | ・ふたり合わせた収入の総額を把握 ・昇給、産休・育休などで増減あり |
毎月の経費を洗い出す | 水光熱費、居住費、通信費、交通費、エンゲル係数などの把握 |
夫婦それぞれのお小遣いも明確に | 余ったお金ではなく、収入の何割をお小遣いにすると決めるとスムーズに |
・買いたいもの ・やりたいこと(投資金額) |
家族として、何にお金を使いたいのか考えることはとても重要で、夫婦で足並みを揃えておくこと ・教育 ・住居 ・老後 |
【ステップ②】家庭の必要経費を洗い出すことが出来たら「現在の貯蓄金額の把握」と「目標貯蓄金額の設定」を決めます。
夫婦間で収入をオープンにしたくない方も、せめて夫婦で「いつまでに○○円貯める」という目標を持ち足並みを揃えておくと、後の意見の相違を回避することもできます。
年収の壁について知る
主婦の労働収入を考える中で「税制度上の収入の壁」についても、知っておきましょう。
上述した「社会保険における収入の壁」とは名前は似ていますが、今度は「税制度上の収入の壁」です。税制上の扶養には、配偶者控除と配偶者特別控除があります。
これを気にかけるのは、夫に扶養されながらパートで働いている場合、収入が税制度上のボーダーラインを超えてしまうと、夫婦の所得税や住民税に影響を及ぼすためです。
夫に扶養されている場合には、夫の所得から課税対象額が最大で38万円控除されるため、夫の税金の支払いが少なくて済みます。
こちらも、社会保険における年収の壁と同じように、職場に調整をかけて貰うよう促す方もいます。
社会保険上の年収の壁について、詳しくは下図をご確認下さい。
年収 (この額を超得た場合) |
妻を扶養に入れている夫の税制度(※注) | パート・アルバイト勤めの主婦の税金控除 |
103万円 | ・配偶者控除(38万円)を受けることが出来るボーダーライン ・夫の所得税・住民税が軽減される |
・所得税は不要 ・住民税は数千円かかる (概ね7000円前後・自治体により変動) |
150万円 | ・配偶者特別控除の満額(38万円)が減額されていく上限 ・夫の税金負担が軽減される(年収制限あり) ・150万を超えると徐々に控除額が減る |
*** |
201万円 | ・配偶者特別控除の満額(38万円)の上限 | *** |
(※注)
配偶者控除・配偶者特別控除を受けるには、夫の年収に制限あり
- 満額受けられるのは年収1120万円以下
- それ以上になると段階的に控除額が減る
- 年収1220万円を超えると対象外となる
もう少し詳しいところまで踏み込むと、税法上では次のようになっています。
- 扶養される妻の年収103万円以下は配偶者控除
- 103万円を超えると配偶者特別控除
※年収150万円まで、夫は最大の38万円の控除を受けることができ、それを超えると段階的に控除額が減る - 201.6万円を超えると控除額は0となる
「201万円の壁」ではなく「201万円の天井」となります。
2018年に法改正があり配偶者控除を受ける夫の年収要件の区分が3つに分類されました。
詳しくは、以下となります。
夫の年収 | 控除額 |
1120万円以下 | 38万円 |
1120万円超-1170万円以下 | 26万円 |
1170万円超-1220万円以下 | 13万円 |
※年収1220万円超の人は、配偶者控除は廃止されました。
参考>国税庁:配偶者特別控除
【主婦のキャリア:これからの暮らしや働き方編】仕事に支配されないために大切なこと
「働く時間」「報酬」についてお伝えしていましたが、主婦のキャリアを考えるには、仕事によってお金や時間に支配されないこともとても重要なポイントです。
育児はいずれ終わりが来ますし、高齢期も必ずやってきます。どれだけの時間働いて、いくら稼ぐのかも重要ですが、それよりも
- 数年後、数十年後には、どのような暮らしをしたいのか
- どのようなキャリアを積み上げていきたいのか
- 将来的に正社員になりたのか、起業を考えるのか
少し先の未来を考えたうえで、将来的なビジョンも考えておくと「今」に悩むことも少なくなります。
主婦のキャリアについては、こちらの記事が参考になると思いますので「主婦のキャリア・セカンドキャリア」が、気になる方はご覧になって下さいね。
キャリアを考える主婦|おすすめの働き方
最後に、主婦におすすめの働き方について。
キャリアをしっかりと考える主婦の働き方は、以下の働き方がおすすめです。
- 正社員
- パート・派遣社員
- パート・派遣社員を経て正社員
- 在宅ワーク
職種内容は、以下も参考にして下さい。スキルのあることや得意なことを活かせる仕事を選ぶと、主婦業をこなしながらでも比較的スムーズに仕事を覚えていくことが出来ますよ。
スキル・得意なこと | 働き方 |
柔軟に働ける | ・製造業 ・販売員 ・飲食店 など |
コミュニケーション能力 | ・営業 ・コールセンター ・介護サポート など |
家事が得意 | ・家事代行 ・介護ヘルパー ・調理スタッフ など |
パソコンスキル | ・事務 ・データ入力 ・プログラミング など |
保育や子どもが好き | ・学童スタッフ ・放課後デイサービス ・学校支援員 ・学習塾講師 ・幼児教室 など |
近年は人手不足が社会問題となっていることもあり、主婦はパートとして採用されやすいもの。将来的には正社員として働くことを希望している方は、パートや派遣社員からキャリアを積み上げて徐々に正社員へキャリアアップしていくという道もあります。
主婦が突然に正社員となるには採用枠も狭いですし、今までの生活サイクルに支障をきたす恐れもあるため、「緩やかに変化すること」をおすすめします。
働き方については、以下の記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。
在宅ワークに興味がある方は以下の記事も、ぜひご覧になって下さいね。
まとめ:【キャリア相談】主婦の最適な働き方|時間・お金・これからについて解説
今回は、「主婦のキャリア相談」にて、よくある悩みを解決する方法について解説しました。
主婦が働くときには、以下がポイントとなります。
- 労働に使える時間
- 労働により得たい報酬
- これからの暮らしと仕事について
その他、主婦におすすめの働き方もお伝えしました。
主婦は本当に大変です!しかし、考え方によっては「妻・母・女性・キャリアウーマン」と多くの生き方を楽しみながら、何度でも人生をリスタートできる立場だということを忘れないでくださいね!
おっしまーい!